スタッフブログ

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  • 2026.09.28

脳卒中後のリハビリで「怖くて動けない」のはなぜ?恐怖心を減らして安全に歩くコツを解説

「リハビリをしなきゃいけないのに、足を出すのが怖くて動けない…」 「また転んでケガをしたらどうしようと、不安でいっぱいになる」

脳卒中(脳梗塞や脳出血)の後遺症でリハビリに取り組んでいるとき、このような「恐怖心」に襲われたことはありませんか?

「周りのスタッフや家族は頑張れと言うけれど、どうしても体がすくんでしまう」

そうやって自分を責めてしまう方も少なくありません。ですが、先にお伝えしておくと、「怖くて動けない」と感じるのは決して心が弱いからではありません。

むしろ、あなたの脳がとても賢く働いていて、あなたをケガから守ろうとしている正常な証拠なのです。

この記事では、リハビリで誰もが感じる「怖さ」の本当の理由と、怖さを減らして安全にステップアップするためのコツを、理学療法士の視点から分かりやすく解説します。

1. なぜサルは人間よりもリハビリの回復が早いの?

ここで、リハビリの研究で使われた、ある興味深い実験をご紹介します。

人間に近い脳のダメージ(片麻痺:体の片側が動かしにくくなる状態)を負ったサルを使った研究です。この研究では、人間と同じような麻痺をもつサルと人間を比べたとき、サルの方が人間よりも歩けるようになるスピードが明らかに早かったという結果が出ました。

実験では、サルの少し離れた場所に大好きなエサを置きます。 サルは歩かなければエサを食べられません。そのため、最初はバランスを崩したり倒れたりしながらも、エサを取るために何度も何度も諦めずに歩こうとしました。

その結果、歩くための脳の神経回路が新しくつながり直し、急速に歩く力を取り戻していったのです。

これを聞くと、「じゃあ人間も、転ぶのを気にせずガムシャラに練習すればいいのかな?」と思うかもしれません。しかし、人間とサルには決定的な違いがあります。

2. 人間が「怖くて動けない」のは脳が未来を予測できるから

なぜ人間は、サルのように「転んでも気にせず動く」ということが難しいのでしょうか?

その理由は、人間が「未来を予測する(こうなるかもしれないと頭で想像する)素晴らしい能力」を持っているからです。

人間はこれまでの経験から、動く前に「頭の中でシミュレーション」ができます。

  • 「この足に体重をかけたら、膝がガクッとなって倒れるかもしれない」
  • 「もし転んで骨折したら、もっと歩けなくなってしまうかもしれない」

このように、事前に「危険」を察知して、自分を守ろうとするブレーキ(危険回避戦略)が自動的に働きます。

さらに、現代の生活では「命がけで歩かないと食べ物がなくて死んでしまう」という状況もありません。だからこそ、脳はごく自然に次のような守りの選択をします。

  1. 「無理に動かない」という一番安全な選択をする
  2.  麻痺していない「良い方の手足」ばかりを使う
  3.  転びそうな難しい練習や挑戦を避ける

つまり、「怖くて動けない」というのは心が弱いのではなく、「脳が頭の良さを活かして、あなたをケガから守ろうとしている防衛反応」なのです。

3. 「怖がるな!」は逆効果。恐怖を減らすリハビリ4つの工夫

「怖がるのは脳が賢い証拠」だと分かっても、恐怖を感じたまま気合や根性で乗り越えようとするのはよくありません。怖いのを無理にガマンして動かそうとすると、体に余計な力が入り、かえって筋肉がカチカチに突っ張ってしまう(痙縮が強まる)からです。

大切なのは、恐怖を力づくで消すことではなく、「怖くない」と思えるレベルまで難易度や危険を下げてあげることです。ここでは、私がリハビリ介入時に実際に行っている4つの工夫をご紹介します。

① 絶対に安全な「環境」をつくる

まずは「万が一バランスを崩しても、絶対に倒れない・ケガをしない」という安心感をつくります。

  • 両手でしっかり掴める手すりや平行棒を使う
  • 万が一のための「安全ベルト(介助ベルト)」をつける
  • 床に柔らかいマットを敷く

「これなら転ばない」と身体が実感できれば、脳の警報アラートはおさまっていきます。

② 練習を「小さなステップ」に分ける

いきなり「歩く」という難しいことに挑戦するのではなく、動きを細かく分解して、簡単なことから順番に行います。

  • 例:「歩くのが怖い」ときのスモールステップ
    1. 椅子に座ったまま、麻痺している方の足にじわーっと体重をかける
    2. 両手で手すりをしっかり握って、ゆっくり立ち上がる
    3. 立った状態で、麻痺している足へ少しだけ重心を移動させてみる
    4. 手すりを持ったまま、一歩だけ前に足をだしてみる

「これなら怖くない」と思える小さな成功を重ねていくことがポイントです。

③ 「安全にできた!」という経験を増やす

「怖かったけれど、ケガなく安全にできた」という経験を何度も繰り返すと、脳のシミュレーションが書き換わっていきます。「この動きなら大丈夫だ」と脳が安心すると、足にかかっていたブレーキが自然と解除されていきます。

④ 「できるかも」という前向きな気持ちへ変えていく

過去に転びそうになった恐怖から「どうせ無理だ」と思っている脳の予測を、「こうやって手すりを持てば安全に動かせるんだ」という前向きな予測へ上書きしていきます。

4. まとめ:怖さはリハビリをよくするための「大切なサイン」

リハビリ中に感じる「怖さ」は、無理に乗り越えなければいけない敵ではありません。それは「今の練習や環境が、今のあなたの体にとって少し難しすぎるよ」という脳からの大切なメッセージ(サイン)です。

もしリハビリ中に「強い怖さ」を感じたら、無理をして突き進むのはやめましょう。一度立ち止まって、「もっと安全な支えはないかな?」「もっと動きを細かく分けられないかな?」と練習内容を見直してみてください。

焦って危ない挑戦をするよりも、「怖くない範囲」で「できた!」という成功体験をコツコツ積み重ねていくことこそが、安全に歩けるようになるための何よりの近道です。

ご自宅で自主トレを行うときも決して無理はせず、手すりや頑丈なテーブルなどがある安全な場所で行ってください。不安なときは担当の理学療法士などに相談し、怖くない安全なリハビリ方法を一緒に考えていきましょう。

ブログ著者

  • 認定理学療法士認定証

脳卒中リハビリテーションセンター

山本 義隆

理学療法士 認定理学療法士(脳卒中)

脳卒中リハビリテーションセンターの山本です。
「もっと動けるようになりたい」「出来るようになりたい」そんなお困りや不安を感じられている方の手助けができるよう、保険外だからこそできる量と質を担保したリハビリテーションを行っております。
患者さま一人ひとりに合わせた最適なリハビリを提供し、「やってよかった」と感じていただけるよう取り組んでまいります。リハビリテーションをご希望の方はお気軽にご連絡ください。

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