スタッフブログ
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- 2026.02.24
自分の手が“赤ちゃん”になる理由
半側空間無視と所有感
― なぜ麻痺側は「自分ではない」と感じるのか ―
半側空間無視という言葉を聞いたことはありますか。
特に右半球損傷後に多くみられる症状です。
左側の世界に注意が向きにくくなる。
食事で皿の左側だけ残す。
左からの声かけに反応しにくい。
しかし臨床では、さらに印象的な場面があります。
麻痺側の手を、
「赤ちゃん」
「人形」
「ペット」
のように扱う患者さんがいるのです。
まるで自分の身体の一部ではないかのように。
■ それは精神症状ではない
これは奇妙な行動に見えるかもしれません。
しかしその背景には、注意ネットワークの障害があります。
半側空間無視では、空間だけでなく身体への注意も偏ります。
その結果、身体図式の更新が不十分になります。
入力が乏しくなると、
その部位は脳内地図の中で“薄く”なります。
存在感が弱くなるのです。
■ 所有感の揺らぎ
私たちは通常、この身体が“自分のもの”だと疑いません。
これを「所有感(sense of ownership)」といいます。
しかし、
身体図式が更新されず、
ボディイメージとの整合性が崩れると、
所有感は揺らぎます。
すると、
・麻痺側を無視する
・人格を与える
・他人のもののように扱う
といった現象が起こることがあります。
それは異常行動ではありません。
脳が整合性を保とうとした結果なのです。
■ 恐怖とのつながり
自分の身体の一部が、自分ではないように感じる。
その状態で立つ。
その足に体重を乗せる。
当然、不安になります。
予測が立たないからです。
支えられるか分からない。
どこにあるか分からない。
分からないものに体重を預けるのは、怖い。
だから固める。
だから突っ張る。
すべてはつながっています。
■ リハビリで支援していること
私たちは単に動きを作っているのではありません。
薄くなった身体の存在感を取り戻し、
身体図式を再構築し、
所有感を育て直しているのです。
触れる。
荷重する。
視線を向ける。
成功体験を積む。
その積み重ねが、
「これは自分の手だ」
「この足で立てる」
という確信を生み出します。
リハビリとは、
身体を鍛えること以上に、
身体を“自分に戻す”プロセスだと考えています。
ブログ著者

認定理学療法士認定証
脳卒中リハビリテーションセンター
山本 義隆
理学療法士 認定理学療法士(脳卒中)
脳卒中リハビリテーションセンターの山本です。
「もっと動けるようになりたい」「出来るようになりたい」そんなお困りや不安を感じられている方の手助けができるよう、保険外だからこそできる量と質を担保したリハビリテーションを行っております。
患者さま一人ひとりに合わせた最適なリハビリを提供し、「やってよかった」と感じていただけるよう取り組んでまいります。リハビリテーションをご希望の方はお気軽にご連絡ください。
