スタッフブログ
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- 2026.03.10
バランスとは何か?
バランスとは何でしょうか。
一般的には、「支持基底面内に重心を保持する能力」と説明されます。
これは力学的には正しい定義です。しかし、臨床で「バランスが悪い」と表現される状態は、それだけでは十分に説明できません。
重要なのは、「重心がどこにあるか」だけではなく、「どこまで安全に動かせるか」です。
バランスとは静止能力ではなく、動的な制御能力です。
支持基底面と重心の関係
立位では、足底で接地している範囲が支持基底面になります。
身体重心がその範囲内にあれば、物理的には転倒しません。
しかし臨床で問題となるのは、支持基底面内で重心をどれだけ移動させられるかという点です。
重心移動の許容範囲が狭くなると、動作は制限されます。
これが「バランスが悪い」と感じられる一因です。
予測的姿勢制御と随伴性姿勢制御
姿勢制御には大きく二つの仕組みがあります。
予測的姿勢制御(anticipatory postural control)
手を伸ばす前に体幹や下肢の筋活動が先行して起こる反応です。
これは運動に伴う姿勢変化をあらかじめ予測し、先回りして調整する仕組みです。
随伴性姿勢制御(reactive postural control)
外乱が加わった際に姿勢を立て直す反応です。
予測ではなく、結果に対する修正反応です。
日常生活では、この二つが連携することで姿勢が保たれています。
感覚とバランスの関係
バランスは筋力のみで決まるものではありません。
視覚、前庭覚、体性感覚などの感覚入力によって、
- 自分がどれだけ傾いているのか
- どの方向に動いているのか
を脳が把握しています。
感覚情報が不正確になると、姿勢制御は不安定になります。
つまり、バランスとは感覚統合の能力でもあります。
脳卒中後に起こる変化
脳卒中後には、
- 筋出力の低下
- 感覚フィードバックの低下
- 予測的制御の不安定化
が生じます。
その結果、重心移動の許容範囲が狭くなります。
安全を優先し、動ける範囲を自ら制限するようになります。
具体的には、
- 支持基底面を広くとる
- 重心を中央付近に固定する
- 足関節戦略よりも股関節戦略が優位になる
といった変化がみられます。
これは異常というより、安全を確保するための適応反応と考えられます。
安定と不安定の理解
安定している状態は、外乱に対して倒れにくい状態です。
しかし同時に、大きな重心移動が起こりにくい状態でもあります。
一方、不安定な状態は重心を動かしやすい状態です。
動きやすい反面、転倒リスクが高まり、不安を伴いやすくなります。
バランス能力とは、単に安定していることではありません。
適切な範囲で不安定さを許容し、必要に応じて制御できる能力です。
まとめ
バランスとは、
- 支持基底面と重心の力学的関係
- 予測的・随伴性姿勢制御の連携
- 感覚統合の精度
- 安定と可動性のバランス
これらが統合された機能です。
リハビリテーションでは、単に安定させることを目標にするのではなく、重心を安全に動かせる範囲を広げていくことが重要になります。
そのためには、筋力だけでなく、感覚入力や予測機能への介入も必要です。
ブログ著者

認定理学療法士認定証
脳卒中リハビリテーションセンター
山本 義隆
理学療法士 認定理学療法士(脳卒中)
脳卒中リハビリテーションセンターの山本です。
「もっと動けるようになりたい」「出来るようになりたい」そんなお困りや不安を感じられている方の手助けができるよう、保険外だからこそできる量と質を担保したリハビリテーションを行っております。
患者さま一人ひとりに合わせた最適なリハビリを提供し、「やってよかった」と感じていただけるよう取り組んでまいります。リハビリテーションをご希望の方はお気軽にご連絡ください。
