スタッフブログ
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- 2026.02.19
“自分”の身体とは何か
「右手を動かしてください」
そう言われたら、皆さんは何の躊躇もなく右手を挙げるでしょう。
私たちはそれを“当たり前”だと思っています。
普段、自分の身体を疑うことはありません。
歩く。
立つ。
手を伸ばす。
それらはほとんど無意識に行われています。
しかしその裏側には、二つの“身体”が存在しています。
■ 無意識の身体 ― 身体図式(body schema)
身体図式とは、感覚入力をもとに脳内で絶えず更新されている「身体の地図」です。
視覚。
前庭覚。
体性感覚。
それらが統合され、
・今、足はどこにあるのか
・どれくらい傾いているのか
・どれだけ力を出しているのか
を瞬時に計算しています。
私たちはそれを意識しません。
だからこそ、
「右足を5cm外側へ動かそう」
と考えなくても歩けるのです。
身体図式は、すべての運動の“土台”です。
■ 意識的な身体 ― ボディイメージ(body image)
一方で、ボディイメージとは、
「自分は今まっすぐ座っている」
「右足に体重を乗せている」
といった主観的な身体像です。
身体図式が無意識の身体なら、
ボディイメージは意識の中の身体。
通常、この二つは一致しています。
だから私たちは違和感なく動けるのです。
一致していることを、私たちは普段意識すらしていません。
■ その一致が崩れたとき
脳卒中では、
・運動麻痺
・感覚麻痺
・深部感覚の低下
などによって、正確な感覚入力が得られにくくなります。
入力が曖昧になると、身体図式は正しく更新されません。
すると、ボディイメージとの間にズレが生じます。
「右足のはずなのに、存在感がない。」
「地面についている感じがしない。」
このとき人は、
“自分の足ではないような感覚”
を抱くことがあります。
それは心理的な問題ではありません。
神経ネットワークの不一致によって生じる、きわめて神経学的な現象です。
■ なぜ恐怖が生まれるのか
脳は常に予測しています。
「このくらい体重をかければ支えられる。」
「このくらい傾いても戻せる。」
しかし身体図式が不安定になると、その予測も不安定になります。
予測できないことは、不安になります。
分からないことは、怖い。
誰しも、夜中の暗闇の中で階段や廊下を恐る恐る歩いた経験はないでしょうか。
見えない。
感じにくい。
確信が持てない。
その状態で身体を預けるのは、勇気が要ります。
だから人は、
・突っ張る
・固める
・動かなくなる
それは怠けでも、意欲低下でもありません。
恐怖は弱さではない。
予測誤差の結果です。
■ リハビリとは何か
リハビリとは、単に筋力を上げることではありません。
身体図式を再構築し、
ボディイメージとの一致を取り戻すこと。
“動かす練習”の前に、
“感じられる身体を取り戻すこと”。
触れること。
支えること。
安心できる環境を整えること。
その積み重ねの中で、
「この足で立てる」
「この手は自分のものだ」
という確信が育っていきます。
その反復した経験が新しい身体を再形成・再学習して行くと考えています。
ブログ著者

認定理学療法士認定証
脳卒中リハビリテーションセンター
山本 義隆
理学療法士 認定理学療法士(脳卒中)
脳卒中リハビリテーションセンターの山本です。
「もっと動けるようになりたい」「出来るようになりたい」そんなお困りや不安を感じられている方の手助けができるよう、保険外だからこそできる量と質を担保したリハビリテーションを行っております。
患者さま一人ひとりに合わせた最適なリハビリを提供し、「やってよかった」と感じていただけるよう取り組んでまいります。リハビリテーションをご希望の方はお気軽にご連絡ください。
