スタッフブログ
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- 2026.03.13
脳卒中後、片側にぶつかるのはなぜ?半側空間無視の本質
片側の壁や家具にぶつかる、食事で片側だけ残す、麻痺側の手をほとんど使わない。
その手を「自分の手ではない」と表現することもあります。
これらは「半側空間無視」と呼ばれる症状です。しかし、単なる視覚障害ではありません。
空間は“見ている”のではなく、“脳内で作られている”
私たちは普段、次の情報を統合して空間を認識しています。
- 視覚情報
- 前庭感覚(体の傾き)
- 体性感覚(触覚・位置感覚)
- 運動の予測情報
つまり、空間とは外界をそのまま見ているのではなく、脳内で再構築されたものです。
脳卒中によってこの統合が破綻すると、片側の空間が“意味を持たない領域”になってしまいます。
これが半側空間無視です。
麻痺側の手を「自分のものではない」と感じる理由
臨床では、麻痺側の手を次のように表現される方がおられます。
- 「赤ちゃんみたい」
- 「人形みたい」
- 「誰かの手みたい」
これは単なる比喩ではありません。身体図式(body schema)が崩れ、麻痺側の身体が自己の延長として統合されていない状態です。
感覚入力の低下や運動出力の減少が続くことで、脳内の身体表象が弱くなり、身体が「自分のもの」として感じにくくなります。
片側にぶつかる理由
半側空間無視では次のような変化が起こります。
- 空間の片側への注意が向きにくい
- 麻痺側への荷重が少ない
- 重心が健側へ偏り、正中感覚がずれる
本人はまっすぐ立っているつもりでも、脳内の「まっすぐ」の基準がずれているため、壁や家具にぶつかってしまいます。
臨床例で理解する半側空間無視
- 歩行リハビリ中の例
麻痺側への体重移動が不十分な方は、歩く際に健側に重心を寄せる傾向があります。
→ 介入例:麻痺側への荷重を促す立位練習や、歩行中にターゲットを意識した視覚・触覚刺激。 - 食事場面での例
麻痺側の食器や箸をほとんど使わない方もいます。
→ 介入例:食器や箸の配置を工夫し、手の使用を促す。感覚入力を強める練習。 - 手の自己認識の例
麻痺側の手を「自分の手ではない」と表現される方。
→ 介入例:鏡を使った視覚フィードバック、触覚刺激、軽い運動で身体図式の再統合。 - 空間統合トレーニング
視床や被殻損傷の方では、左右空間情報の統合が不十分な場合があります。
→ 介入例:左右にターゲットを置いた追視・指差し練習、姿勢を変えた環境探索。
声かけだけでは不十分
「左を見てください」と声をかけるだけでは十分ではありません。
感覚入力が低下し、身体図式が崩れ、姿勢制御が偏っている場合、注意を向けるだけでは本質的な変化にはつながりません。
半側空間無視は“空間の再統合”の問題
半側空間無視は、次のいずれか、あるいは複合的な破綻によって生じます。
- 視覚優位の問題
- 姿勢制御の問題
- 身体イメージの問題
- 感覚統合の問題
これらのレベルで破綻している可能性を理解し、身体と空間の関係を再び結び直すことが重要です。
介入の方向性
半側空間無視は怠けや性格の問題ではありません。
脳の働きの変化によって生じる症状です。
その背景にある身体図式や感覚統合の理解が、介入の方向性を大きく左右します。
当院では、医師と一緒にリハビリを行い、感覚入力を高め、麻痺側への荷重を促し、正中感覚を再獲得していくサポートをしています。
まずは「何が起きているのか」を正しく捉えること。
そこから回復への道筋が見えてきます。
ブログ著者

認定理学療法士認定証
脳卒中リハビリテーションセンター
山本 義隆
理学療法士 認定理学療法士(脳卒中)
脳卒中リハビリテーションセンターの山本です。
「もっと動けるようになりたい」「出来るようになりたい」そんなお困りや不安を感じられている方の手助けができるよう、保険外だからこそできる量と質を担保したリハビリテーションを行っております。
患者さま一人ひとりに合わせた最適なリハビリを提供し、「やってよかった」と感じていただけるよう取り組んでまいります。リハビリテーションをご希望の方はお気軽にご連絡ください。
