スタッフブログ
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- 2026.02.09
リハビリとは何かー発達から考える
脳卒中は上位運動ニューロン障害と言われます。
とくに「歩行」を中心に考えると分かりやすい。
私たちは生まれてから1~2年をかけて、
ようやく「歩く」という動作を獲得します。
寝返りをし、
座り、
立ち、
転びながら、
少しずつ重力と折り合いをつけ、
歩行という高度な運動を手に入れます。
しかし脳損傷によって、
脳皮質からの制御が破綻すると、
その歩行は再び困難になる。
完成された動作が、崩れるのです。
■ 環境が変わるということ
学生時代に受けた運動発達の講義を、今でも鮮明に覚えています。
「脳卒中リハビリと運動発達は似ている」
そう教わりました。
胎児は母胎内という、ほぼ非重力環境で育ちます。
しかし出生と同時に、
・呼吸様式が変わる
・重力下にさらされる
・感覚入力が激変する
環境は一変します。
それまでとはまったく違う世界で、生きることを求められる。
これは、脳卒中後の患者さんにも起きていることではないでしょうか。
今まで当たり前に制御できていた身体が、
突然、思い通りにいかなくなる。
世界は同じでも、
身体の感じ方が変わる。
だからこそ必要なのは、
「筋力強化」以前に、
環境との再交渉なのです。
■ 首が座るとは何か
乳児はまず「首座り(定頸)」を獲得します。
しかしそれは単なる頸部筋力の問題ではありません。
・前庭情報の安定
・視線の制御
・体幹の抗重力活動
・正中線の認識
これらが統合された結果としての“首座り”です。
そして、
・正中線志向(左右の認識)
・四肢の探索(手足を触る・舐める)
・自己身体像の形成
といった経験を通して、
「自分の身体とは何か」を学んでいく。
その積み重ねの先に、立位があり、
そして歩行があります。
■ 歩行はゴールではない
歩行は突然現れるのではありません。
無数の構成要素の上に成り立っています。
・抗重力伸展
・体幹回旋
・左右への重心移動
・支持脚への荷重
・空間認識
これらが再構築されて、
初めて“歩行らしい”ものが出現します。
歩行だけを切り取って練習するのは、
家の屋根だけを直そうとするようなものかもしれません。
■ 脳卒中後は「逆行」なのか
よく「発達の逆行」と言われます。
しかし私は、単純な逆戻りではないと思っています。
それは、
成熟した神経ネットワークが損傷された状態から、再編を迫られている状態。
つまり、
「もう一度、構成要素を再学習するプロセス」です。
どのネットワークが破綻したのか。
どの感覚統合が崩れたのか。
どの段階が未再構築なのか。
それを予測し、
必要な要素を段階的に支援する。
それが、
運動発達の知識を応用するということだと思います。
■ 私たちは“リボーン”を支援している
当院の院長は、脳卒中再生医療を専門としています。
その先生が患者さんによく言う言葉があります。
「今日が新しい誕生日だと思って、新しい身体で一緒に頑張りましょう。」
その想いを象徴するように、
院内には「ハッピーバースディ」と名付けられた絵画が飾られています。

脳卒中リハビリは、
単に筋力を上げることではありません。
それは、
・重力との再交渉
・身体の再認識
・空間との再統合
ある意味で、
もう一度、育つプロセスを支援すること。
歩行練習の前に、
その人の「首」は座っているのか。
正中線は感じられているのか。
左右は分かれているのか。
そこを問わずして、
歩行だけを求めるのは、少し乱暴かもしれません。
私たちは歩かせているのではない。
その人が、
もう一度、自分の身体を育て直す時間に伴走しているのです。
ブログ著者

認定理学療法士認定証
脳卒中リハビリテーションセンター
山本 義隆
理学療法士 認定理学療法士(脳卒中)
脳卒中リハビリテーションセンターの山本です。
「もっと動けるようになりたい」「出来るようになりたい」そんなお困りや不安を感じられている方の手助けができるよう、保険外だからこそできる量と質を担保したリハビリテーションを行っております。
患者さま一人ひとりに合わせた最適なリハビリを提供し、「やってよかった」と感じていただけるよう取り組んでまいります。リハビリテーションをご希望の方はお気軽にご連絡ください。
