日々研究が進められ、様々な医療の場でも今、注目を集めている「再生医療」。
脳出血や脳梗塞の後遺症で苦しむ方への新たな治療法としても、
現在少しずつですが、知られるようになってきました。
「脳卒中再生医療」とは、
厚生労働省より再生医療等提供計画番号:PB5160002を取得している治療方法です。
よく勘違いされてしまうのですが、失われてしまった機能を完全に元通りに戻す、ということは残念ながら現在の医療では不可能です。
脳卒中で下半身不随になった方が、以前のように走ったり激しいスポーツを楽しんだりということができるようになるわけではありません。
でも、全く動かなかった右手で、ものをつかめるようになる、歩けなかったけれど、杖をついて短い距離でも歩くことができるようになるなど、脳卒中再生医療は、 リハビリと同様の効果、またはそれ以上の効果をもたらす可能性があります。
という患者様にとって、脳卒中再生医療は、新たな治療法となりうる治療ですが、一方で臨床応用されて間がなく、一般医療としてはまだ普及は進んでいません。
新しい医療であることから、まだまだ安全性やその効果に対して、様々な立場から多用な意見はあります。
しかし、その治療により、少しでも回復の可能性があるのであれば、私たちは、今苦しんでいる人々のために積極的に治療を行いたいと考えています。
また、再生医療について、厚生労働省では安全性確保と実用化推進のため、法律の整備や助成などの取り組みを実施しています。
再生医療を行うためには、厚生労働省への申請・認定が必須となります。
当院では、医療法人大雅会特定認定再生医療等委員会を発足し、平成28年厚生労働大臣より認定番号[NA8150032]が公布されています。
2017年6月現在、特定認定再生医療等委員会の数は全国で48。
大学病院等が大半の中、クリニック規模の民間病院では医療法人大雅会が初めて取得しました。
自分自身の骨髄幹細胞を培養・投与することで、失われた身体機能の回復が期待できます。
具体的には、 血流が良くなることで筋肉の動きを助ける、動かなかった部位が動くようになる、痛みが軽減する などがあります。
再生医療の治療を単体で行うのではなく、患者様の身体の状態や状況にあったリハビリ治療を並行して行うことで、より高い効果を期待できます。
リハビリ治療の現場でもまだ、
「再生医療」についての理解が進んでいないケースも多く、「新しい治療」としてリハビリ現場からは敬遠されがちな治療ではありますが、 リハビリ治療と再生医療を二人三脚で進めることが、最も高い効果を発揮できる と考えています。
脳卒中を起こしてしまった部位だけではなく、今現在、多少傷ついているが脳卒中を引き起こすまでに至っていない血管を、今後脳卒中が起きにくいようにきれいに修復することは、脳卒中の再発予防にもつながります。
脳卒中を起こしてしまった方の不安の中には、どの程度、症状が改善するのかという他に、 再発してしまうのではないかという心配もあります。 このような不安を解消するため、 傷みかけている血管を直接修復できうる方法として注目されています。
患者様ごとの個別の症状や状況、身体機能により効果を発揮できない場合もあります。
また治療を受けることが適切ではない場合もあります。
治療による効果が見込めるかどうか、治療が適切かどうかを判断するため、
専門医による診察・カウンセリングを事前に行います。
※全ての方に同じ効果が得られるという治療ではありません。
「血液の採取→骨髄液の採取→幹細胞の培養→幹細胞の投与」を行います。
培養して点滴で体に投与する骨髄幹細胞は血管や神経を修復します。この機能を用いて、脳卒中で傷んだ神経や血管を再生させ、脳卒中の症状を改善しようという治療です。
当院では通常、3~4週間間隔で合計3回の投与治療を行っています。
骨髄の中には「間葉系幹細胞」という細胞があり、
この細胞は主に、骨や軟骨、脂肪といった細胞や心筋・リンパ管・血管内皮細胞に分化するという特性があります。この特性を利用し、採取・培養した間葉系幹細胞を何回かに分けて継続的に投与することで、新たな毛細血管を作り出し、血流の改善や、脳卒中が再発しにくいよう、血管の修復を行うというものです。
血流が改善することにより、機能の回復や、脳卒中の再発予防効果を期待できます。
また間葉系幹細胞は神経幹細胞として働くことを用いて、
壊れた脳細胞周囲の脳神経細胞の活性化および再生を行うという方法もあります。
これは間葉系幹細胞を投与することにより内因性神経の再生を活性化して、神経幹細胞をより定着させ、傷ついた神経細胞を再生させるといった方法です。現在のところ、投与された間葉系幹細胞が神経細胞になることが確実に実証されたわけではありませんが、実証に向けて、研究が今もすすめられています。
現在のところ、残念ながら脳卒中再生医療は、医療保険の対象外となり
自由治療(自費治療・保険外診療)となります。
「なぜ自由診療なのか?」というご質問をよく頂きます。再生医療は新しい治療法として、様々に研究が進められ注目を集めていますが、「保険治療」としては国に認められておりません。 つまり健康保険を使えない治療という事になります。
「保険治療でない治療だけど、大丈夫なのか?」という心配をされる方も中にはいらっしゃいますが、保険治療として認められていないからといって、治療そのものが危険だとか、認められていないというわけではありません。
例えば、再生医療の他にも、体外受精などの不妊治療や歯科のインプラント治療、海外では承認されているが、国内ではまだ認められていない治療薬を使った抗がん剤治療なども、日本では同様に自由診療(自費治療)となっています。
※ 高額療養費制度や、加入されている医療保険や高度先進医療保険も対象外です。ただし、医療費控除の対象にはなります。
また、当院では院内に培養室を設け、細胞培養を行っています。
外部の機関に頼ることなく培養を行うことで、安全管理が行き届いた細胞培養が可能になると共に、
余分な費用をカットすることで、患者様の費用のご負担を少なくすることができました。
当院では通常、3~4週間間隔で合計3回の投与治療を行っており、約3~4ヶ月が治療期間の目安です。
治療後1週間で変化が出る人もいれば、1年くらいかけて徐々にその効果が出てくる人もいます。
個人差がある為、一概にはどのくらいの期間というのは言えませんが、
これまでの患者様の症例からも、治療開始から約1年間はリハビリを継続していただくことをおすすめしています。
脳卒中再生医療の治療結果は、患者さまの病状や身体の具合によって個人差があります。
しかし治療を始めるのが早ければ早いほど、良い結果が出ています。
治療を受けるかどうかを迷われている方は、出来る限り早めにまずはご相談ください。
たとえ治療を今すぐ始められなかったとしても、どんな可能性があるのか、治療は可能なのかどうか、診療・カウンセリングをしながら、患者様とともに課題に向き合い、サポートいたします。
自身の幹細胞を採取し培養を行う治療のため、副作用はほとんどありません。
まれに投与後に微熱や投与部位の「かゆみ」や「発赤」などが出ることがあるという報告はありますが、血栓や塞栓を起こした報告は現在のところありません。
脳出血または脳梗塞を発症後、できるだけ早期の再生医療をおすすめしていますが、
慢性期だからといって効果が出ないということはありません。
また年齢制限等も設けておりません。
年齢や発症してからの期間、脳損傷の度合い、障害の度合い等は人それぞれで異なりますので、一概にどんな方が治療に適している、ということははっきりとは言えません。しかし強いて言うなれば、ご本人とそのご家族が諦めていない事、ご本人とご家族が一丸となって前に進んでいこうとしている患者様は効果が期待できると思いますし、実際効果も表れています。
まだやるべきことが残っている患者様。残された人生をより有意義に過ごしたいと考えられている患者様にとっては、脳卒中再生医療は新たな光となる治療法だと言えます。
反対にリハビリが不可能な患者様やリハビリを行う意思がない患者様にとっては、再生医療は必ずしも最適な治療法にはなりません。
また下記の方は、今すぐの治療が難しく、状況をみながら治療時期を調整する必要があります。
治療実績は約80名程度、
そのうち72名が症状の改善がありました。(2018年現在)
治療により多くの方に身体的な改善は認められております。また脳血流量の検査では脳血流が改善したり、CTやMRIの画像検査で損傷部位が小さくなった症例も認められております。
「治りたい」という思いの先には必ず「こうしたい」という思いがあるはずです。
治療にあたっては、必ずご自身の目標を決めていただき、
その目標に向かって治療を重ねながら、
共にあきらめず、一緒に取り組んでいく、という姿勢を私たちは大切にしています。
目標に向かってあきらめないこと。「治療のための治療」ではなく、その先の未来をえがき、
「治療だけで人生を終わってはいけない」ということを、お伝えしています。