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脳卒中の「急性期・回復期・生活期」とは? リハビリの違いをわかりやすく解説

2026.11.02

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「急性期と回復期は、何が違うのですか?」

「退院して生活期に入ったら、もう回復しないのでしょうか?」

「脳梗塞から何年もたっていますが、今からリハビリを続けても意味はありますか?」

脳梗塞や脳出血を経験された患者さんやご家族から、こんな質問を聞かれることがあります。

脳卒中の治療やリハビリテーションは、大きく分けて「急性期」「回復期」「生活期」という3つの時期に分けられます。

少し難しい言葉なので、まず最初に何をする時期なのかを説明します。

  • 急性期:命と脳を守る時期
  • 回復期:できることを増やす時期
  • 生活期:自分らしい暮らしを取り戻し、さらに良くしていく時期

ということです。

今回は、この3つの時期について、具体例を交えながらわかりやすくお話ししたいと思います。

① 急性期とは? ― 命と脳を守る時期

急性期とは、脳梗塞や脳出血を発症した直後から、病状が落ち着くまでの時期をいいます。

例えば、ある朝、お父さんが突然倒れて、右手と右足が動かなくなり、うまく話せなくなったとします。

救急車で病院に運ばれ、検査を受けた結果、脳梗塞と診断されました。

このとき、医師が最初に考えるのは、何よりも命を守ること、そして脳の損傷がこれ以上広がらないようにすることです。

脳梗塞では、詰まった血管の血流を回復させる治療などを検討します。脳出血では、出血の状態や血圧を管理し、必要であれば手術を行います。

これが急性期の治療です。

急性期にもリハビリは始まります

「発症したばかりなのに、もうリハビリをするの?」

そう思われるかもしれません。

実は、急性期でも、患者さんの状態が許せば早い段階からリハビリテーションを始めます。

例えば、

  • ベッドの上で手足を動かす
  • 身体を起こして座る
  • 安全を確認しながら立つ練習をする
  • 食べ物を飲み込む練習をする

といったことです。

長い間寝たままでいると、筋肉が弱くなったり、関節が動かしにくくなったりすることがあります。

それを防ぐことも、急性期のリハビリの大切な役割です。

ただし、早く始めれば始めるほど良いというわけではありません。 脳の状態や血圧などを確認し、医師やリハビリスタッフが安全性を判断しながら進めます。

つまり、急性期は「命を守りながら、回復への準備を始める時期」なのです。

② 回復期とは? ― できることを増やす時期

急性期の治療が終わり、病状が落ち着いてきたら、次は回復期です。

回復期は、集中的なリハビリテーションによって、身体の機能や日常生活でできることを増やしていく時期です。

先ほどのお父さんの例で考えてみましょう。

命は助かりましたが、右手と右足には麻痺が残っています。

最初は一人で立つこともできませんでした。

そこで、リハビリスタッフと一緒に、

「まずはベッドから起き上がってみましょう」

「次は椅子から立ってみましょう」

「今度は手すりを使って歩いてみましょう」

と、一つずつ練習していきます。

昨日は立つことができなかったのに、今日は少しだけ立てた。

先週は数歩しか歩けなかったのに、今週はもう少し遠くまで歩けた。

こうした小さな変化を積み重ねながら、回復を目指していきます。

リハビリは歩く練習だけではありません

回復期のリハビリには、さまざまな種類があります。

例えば、手が動かしにくい方には、箸やスプーンを使う練習。

言葉が出にくい方には、話すことや言葉を理解する練習。

身体のバランスが悪い方には、安全に立ったり歩いたりする練習。

さらに、着替え、トイレ、入浴など、毎日の生活に必要な動作も練習します。

大切なのは、単に手足を動かせるようにすることだけでなく、その手足を使って何ができるようになるかということです。

例えば、右手が以前のように動かなくても、工夫によって自分で食事ができるようになるかもしれません。

それも大切な回復です。

つまり、回復期は「できなかったことを、少しずつできるようにしていく時期」なのです。

③ 生活期とは? ― 自分らしい暮らしを取り戻す時期

回復期のリハビリを終え、自宅などで日常生活を送るようになると、生活期と呼ばれる段階に入ります。

生活期は、以前「維持期」と呼ばれることもありました。

「維持」という言葉を聞くと、今の状態を保つだけで、それ以上の回復は望めないように感じるかもしれません。

しかし、生活期の目的は、今の状態を維持することだけではありません。

身体の機能を維持しながら、さらに改善を目指すこと。そして、家庭や社会の中で自分らしく生活できるようになることも大切な目標です。

生活期のリハビリは、毎日の暮らしにつながっています

例えば、先ほどのお父さんが自宅に帰ってきたとします。

病院では杖を使って歩けるようになりましたが、まだ一人で外出するには不安があります。

そこで、生活期にはこんな目標を立てることができます。

「まずは家の中を安全に歩けるようになろう」

「次は近所の公園まで歩いてみよう」

「いつか家族と一緒に買い物に行きたい」

「できれば、もう一度仕事にも戻りたい」

こうした目標に向かって、必要なリハビリを続けていくのです。

生活期では、通院や訪問リハビリなどを利用するほか、日々の生活そのものが練習の機会になることもあります。

ただし、転倒などの危険もありますので、無理をせず、専門家と相談しながら取り組むことが大切です。

④ 生活期に入ったら、もう回復しないのでしょうか?

これは、私が特にお伝えしたい事です。

脳卒中を経験された方の中には、

「発症から半年以上たったので、もう良くならないと言われました」

「リハビリを続けても意味がないのでしょうか」

と、不安を抱えている方がいらっしゃいます。

確かに、脳卒中による身体機能の回復は、発症後の早い時期に大きく進むことが多く、その後は回復の速度がゆるやかになる傾向があります。

しかし、回復の速度がゆるやかになることと、回復の可能性が完全になくなることは、同じではありません。

私たちの脳には、経験や練習によって神経の働き方やつながりが変化する性質があります。

これを「脳の可塑性(かそせい)」といいます。

少し難しい言葉ですが、道路に例えるとわかりやすいかもしれません。

いつも使っていた道路が通れなくなったとき、遠回りしても別の道を探して目的地に向かうことがあります。

脳も、傷ついた場所そのものが元どおりになるわけではありませんが、残された神経の働きを生かし、練習によって動作の方法を学び直せる場合があります。

もちろん、すべての患者さんが同じように改善するわけではありません。脳の損傷部位や程度、残っている機能などによって回復の可能性は異なります。

それでも、発症から長い時間がたっているという理由だけで、すべての可能性を否定する必要はないのです。

実際、生活期の脳卒中患者さんに対しても、歩行訓練や筋力トレーニングなどによって、身体機能や日常生活動作の改善を目指すことが推奨されています。

大切なのは、「何年たったか」だけではなく、「今、何ができて、何が難しいのか」を正しく評価することです。

⑤ 急性期・回復期・生活期は、別々の治療ではありません

ここまで3つの時期についてお話ししましたが、ぜひ覚えておいていただきたいことがあります。

それは、急性期・回復期・生活期は、それぞれ独立したものではなく、一つにつながった回復の過程だということです。

急性期には命を守り、回復期にはできることを増やし、生活期にはその力を毎日の暮らしに生かしていきます。

また、生活期に入ってからも、麻痺やしびれ、歩行障害、失語症などの後遺症に対して、どのような治療やリハビリが適しているのかを考え続けることが大切です。

なお、これらの時期はカレンダーの日付だけで厳密に区切られるものではありません。

症状が軽く、急性期の治療後すぐに自宅へ戻る方もいれば、長い期間にわたって入院治療や専門的なリハビリを必要とする方もいらっしゃいます。

患者さん一人ひとりで、回復の道のりは違うのです。

大切なのは、今の自分に合った目標を持つこと

脳卒中後の治療とリハビリテーションには、3つの大切な時期があります。

急性期は、命と脳を守る時期。

回復期は、できることを増やす時期。

生活期は、自分らしい暮らしを取り戻し、維持・改善を目指す時期。

私は、脳卒中後の回復を考えるとき、患者さんが「以前と同じように動けるようになるか」ということだけでなく、「これからどのような生活を送りたいのか」ということも大切だと考えています。

もう一度、自分の足で歩きたい。

自分の手で食事をしたい。

家族と旅行に行きたい。

もう一度、仕事や趣味を楽しみたい。

その目標は、人それぞれ違っていて当然です。

生活期は、回復を諦める時期ではありません。自分らしい生活を取り戻すために、今できることを考えていく時期なのです。


参考文献・資料

  1. 厚生労働省「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」2023年3月31日。急性期から生活期まで一貫したリハビリテーションの必要性を示しています。
    https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc7580&dataType=1
  2. 日本脳卒中学会「脳卒中急性期リハビリテーション診療の指針」『脳卒中』2024年、46巻1号、47–86頁。2024年1月25日公開。
    https://doi.org/10.3995/jstroke.11206
  3. 公益社団法人 日本リハビリテーション医学会「脳卒中のリハビリテーション治療」。急性期・回復期・生活期の役割を解説しています。公開日確認できず、2026年10月26日参照。
    https://www.jarm.or.jp/civic/rehabilitation/rehabilitation_01.html
  4. 島根県 脳卒中・心臓病等総合支援センター「脳卒中のリハビリテーション」。『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕』等を参考に作成された患者向け解説。公開日確認できず、2026年10月26日参照。
    https://shimane-noushin.jp/illness/stroke_03

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