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脳梗塞後、足は動くのに歩けないのはなぜ? 脳と歩行の関係とは!

2026.10.09

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―筋力だけでは説明できない「歩く」という動作―

「ベッドの上では足を上げられるのに、立つと一歩が出ない」

「膝も曲げられる。足も動く。それなのに歩けない」

「先生、こんなに足が動くのに、どうして歩けないのでしょうか?」

脳梗塞の患者さんを診ていると、このような質問を受けることがあります。

ご家族から見ても不思議だと思います。

寝た状態では足を上げられる。

膝も曲がる。

足首も少し動く。

それなら立てば歩けそうに見える。

ところが、実際に立って歩こうとすると、患側の足をなかなか前に出せない。あるいは前に出せても、つま先から着いたり、足が内側を向いたり、膝が伸び切ったりして、怖くて患側へ体重を乗せられない。

なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。

最初に結論からお伝えします。

『足が動くことと、歩けることは同じではありません。』

歩くためには、単に筋肉へ「動け」という命令を送るだけでは足りません。

『筋力、感覚、関節の動き、筋肉の緊張、バランス、注意力、そして骨盤・股関節・膝・足関節を適切なタイミングで連動させる脳の働き』

が必要です。

脳梗塞では、このうち一つだけが障害されるとは限りません。

いくつもの問題が重なった結果として、

『足は動くのに、うまく歩けない』

ということが起こるのです。

※脳卒中後の歩行障害が、筋力だけではなく、運動制御、痙縮、感覚、バランスなど複数の要因から成り立つことは、脳卒中リハビリテーションのガイドラインや歩行研究で広く示されています。[1][2]

以前の「脳出血後、なぜ歩けなくなるのか?」との違い

以前の院長ブログで、

「脳出血後、なぜ歩けなくなるのか?」

について、麻痺、感覚、痙縮、バランス、高次脳機能などからお話ししました。

▶ 関連記事
「脳出血後、なぜ歩けなくなるのか?」を読む

脳梗塞でも基本的な歩行障害の仕組みには共通点があります。

ただ、今回の記事ではもう一段踏み込んでお話ししたいと思います。

『足そのものは動く患者さんが、なぜ実際の歩行になるとうまくいかないのか』

という問題です。

ここを理解すると、脳卒中後の歩行を「筋力があるか、ないか」だけで考えてはいけない理由が見えてきます。

そもそも「歩く」とは、足を前に出すだけではありません

歩いている人を横から見てみてください。

骨盤が動く。

股関節が動く。

膝が曲がる。

足首が動く。

足が床につく。

体重がその足へ移る。

そして反対側の足が前へ出る。

この一連の動きを、私たちはほとんど意識せずに繰り返しています。

しかし脳の中では、その瞬間ごとに、

「どの筋肉を働かせるか」

「どの筋肉の力を抜くか」

「膝をいつ曲げるか」

「足首をいつ上げるか」

「どちらの足へ体重を移すか」

「体が傾いていないか」

という膨大な調整が行われています。

言ってみれば、歩行はオーケストラのようなものです。

一つひとつの楽器が鳴っていても、タイミングがずれていれば曲にはなりません。

歩行も同じです。

『筋肉が一つずつ動くこと』と、『それらが連動して歩行になること』は別の問題なのです。

※脳卒中後歩行では、関節運動、筋活動、タイミング、左右対称性などが複合的に変化することが示されています。[2][3]

① 足は動いても、「必要なときに必要な動き」ができない

診察室のベッドで、

「足を上げてください」

と言うと上げられる。

「膝を曲げてください」

と言うと曲げられる。

「足首を上へ向けてください」

と言うと少し背屈できる。

それでも歩けないことがあります。

なぜでしょうか。

ベッド上で一つの関節を動かすことと、歩行中に体重を支えながら複数の関節を連動させることは、まったく同じ課題ではないからです。

歩行では、ほんの短い時間の中で、

骨盤。

股関節。

膝関節。

足関節。

が次々に役割を変えていきます。

そして必要なのは、

『動くかどうか』だけではなく、『必要なタイミングで、必要な方向へ、必要な強さで動かせるか』

です。

脳梗塞のあとには、この「選択的な運動のコントロール」が崩れることがあります。

足は動く。

でも歩行に必要な形では動かせない。

ここに、「足は動くのに歩けない」という一つの理由があります。

※脳卒中後歩行では筋力低下に加え、異常な筋活動や運動シナジー、タイミングの障害が関係します。ただし、どの要因が主因かは患者さんごとに異なります。[2][3]

② 感覚が悪いと、患側の足へ体重を乗せることが怖くなる

歩くためには筋力だけではなく、感覚が必要です。

私たちは目を閉じていても、

「足が床についている」

「足首がこのくらい曲がっている」

「今、右足に体重が乗っている」

ということを、ある程度感じ取ることができます。

この働きには、足底の感覚や位置覚、固有感覚などが関係しています。

ところが脳梗塞によって感覚を処理する経路が障害されると、

「足は動くけれど、足がどこにあるのかわかりにくい」

「床を踏んでいる感じが弱い」

「体重を乗せても大丈夫なのかわからない」

ということがあります。

そうなると当然、患側の足へ体重を乗せることが怖くなります。

私はここを非常に重要だと考えています。

患者さんが患側へ体重を乗せないのを見て、

「もっと左足に乗ってください」

と指示するだけでは十分ではないことがあります。

本人にとっては、

『そこへ体重を乗せて本当に大丈夫なのか、脳が確信できない』

のかもしれないからです。

※固有感覚や体性感覚の障害が脳卒中後の歩行、バランス、足部クリアランスなどに関係することは示されています。ただし、個々の患者さんの「怖さ」が感覚障害だけによって生じていると断定することはできません。[4]

③ 内反・底屈があると、「足をつくこと」そのものが怖くなる

多くの患者さんを診ていて、私が特に気になる歩き方があります。

足そのものは前へ出せる。

ところが、前へ出そうとすると患側の足首が内側へ向きやすい。

さらに底屈が強いため、足首が十分に背屈せず、踵からではなくつま先や足の外側から地面につきそうになる。

このような患者さんです。

これを専門的には、程度や原因によって『内反尖足』や『痙性内反尖足』などと表現します。

足が内側にひねられ、つま先が下を向いた状態で床へ着こうとすれば、患者さんからすると怖いのは当然です。

「この足に体重を乗せたら、足首をひねるのではないか」

「転ぶのではないか」

そう感じれば、患側への荷重を避けようとします。

すると反対側へ体重を逃がしたり、患側を早く床から離したり、別の方法で足を前へ運んだりするようになります。

※内反尖足には、ふくらはぎや後脛骨筋などの過活動・痙縮だけでなく、足関節背屈筋や外反筋の弱さ、選択的運動制御の低下、軟部組織の短縮などが複雑に関係します。[5]

※脳卒中後の底屈・内反が立位や歩行、足部の安定性、足部クリアランスを障害することは医療的に証明されています。一方、「内反=痙縮だけが原因」と考えるのは正しくありません。[5]

④ 足首の問題は、膝や股関節、骨盤まで変えてしまう

これからお話しすることは、私が患者さんの歩行を見るときに特に重要視している部分です。

人間の足は、足首だけで歩いているわけではありません。

骨盤―股関節―膝関節―足関節は、一つのつながった運動として働きます。

たとえば足首が強く底屈し、つま先が床へ引っかかりそうになったとします。

そのままでは足を前へ運べません。

そこで体は別の方法を使います。

膝を十分曲げられない場合には、骨盤を持ち上げるような動き、いわゆる『hip hiking』を使ったり、脚を外側へ回す『分回し歩行』を使ったりすることがあります。

股関節を大きく動かして、つま先を床から逃がすこともあります。

逆に立脚期では、足関節底屈の強さや下腿の進み方、筋力や感覚の状態によって、膝が後方へ押され、『反張膝』と呼ばれる膝の過伸展がみられる患者さんもいます。

つまり、

『足首の問題が、足首だけで終わらない』

のです。

足関節の位置が変われば膝へ影響する。

膝の動きが変われば股関節が補う。

さらに骨盤や体幹まで動かし方を変える。

歩行は一つの連鎖だからです。

ただし、ここには非常に重要な注意点があります。

『内反・底屈があれば、必ず骨盤がこの方向へ動き、必ず反張膝になる』という決まった一本のパターンがあるわけではありません。

遊脚期には患側骨盤の挙上がよくみられますが、歩行周期や障害の組み合わせによって骨盤の下降、回旋、後退など別の偏位も起こり得ます。また反張膝も、足関節だけではなく大腿四頭筋の制御、下腿三頭筋、感覚障害など複数の原因で起こります。

※脳卒中後に足関節・膝・股関節・骨盤の代償運動が連鎖すること自体は歩行解析で示されています。

※特定の患者さんについて「Aが起きたから必ずB、次にCが起きる」と一方向の因果関係まで決めるには、診察や歩行解析が必要です。[2][3][6]

⑤ 「今歩ける方法」が、必ずしも「これから目指す歩き方」とは限らない

脳卒中の患者さんは、とてもよく工夫されています。

転ばないために。

怖くないように。

何とかトイレまで行くために。

自分なりの歩き方を身につけています。

それ自体は決して悪いことではありません。

むしろ急性期や回復期では、安全に移動するために必要な代償であることもあります。

しかし、私が少し気になるのは、

『今、一番歩きやすい方法だけを繰り返すこと』

が、そのまま長期間のリハビリになっている場合です。

たとえば本来なら、

足首を背屈する。

膝を適切に曲げる。

股関節を前へ出す。

骨盤を適切に動かす。

患側へ体重を移す。

という動きを組み合わせる必要があるのに、

それが難しいため、骨盤を大きく振り、脚を外側から回す方法だけで歩き続けている。

もちろん、その歩き方が必要な患者さんもいます。

しかし、

『なぜその歩き方になっているのか』

を理解せず、ただ歩く回数だけを増やすことが、本当にその患者さんにとって最善なのかは考える必要があります。

リハビリでは、

「歩けたか」

だけでなく、

「なぜこの歩き方になっているのか」

を見る必要があります。

※脳卒中後歩行には一次的な障害と、それを補う二次的・代償的な動きが混在することが知られています。[6]

※代償歩行をどこまで修正すべきかは一律には決められません。安全性、生活上の必要性、体力、回復段階、本人の目標によって判断すべき問題です。

⑥ バランスが悪ければ、足が動いても一歩を出せない

一歩を出すということは、実は少し怖い動作です。

なぜなら片方の足を床から離す瞬間、もう片方の足だけで身体を支えなければならないからです。

患側で十分に身体を支えられない。

体がどちらへ傾いているかわからない。

転倒した経験がある。

こうした状態では、足そのものを動かす能力が残っていても、一歩を出すことが難しくなります。

『歩行には、「足を動かす能力」と同じくらい「片脚で身体を支える能力」が必要なのです。』

脳卒中後にはバランス能力の低下や転倒への不安もよくみられ、歩行能力に大きく影響します。[1]

⑦ 高次脳機能障害が歩行を邪魔していることもある

足の筋肉ばかり見ていると、見逃してしまうことがあります。

それが高次脳機能です。

たとえば半側空間無視がある患者さんでは、患側の空間や身体への注意が向きにくくなることがあります。

歩いていて患側の障害物に気づきにくい。

まっすぐ歩いているつもりでも片側へ寄っていく。

患側へ十分に体重を移せない。

といったことが起こり得ます。

半側空間無視と歩行・バランスとの関連については、システマティックレビューでも、左右方向の安定性、荷重移動、歩行経路の偏りなどとの関連が報告されています。[7]

また、歩くこと自体に注意を大量に使わなければならなくなると、

「歩きながら話す」

「周りを見ながら歩く」

「人を避けながら歩く」

という、日常生活では当たり前のことが急に難しくなることもあります。

また、私が日ごろからお伝えしている「楽しんで歩く」といった大切なリハビリが行えなくなってしまうのです。

※高次脳機能障害や半側空間無視が歩行・移動能力へ影響することは医学的に示されていますが、影響の程度は患者さんごとに異なります。[7]

装具は「できないから付けるもの」だけではありません

ここで装具の話をしたいと思います。

内反が強い。

底屈が強い。

足首が十分に背屈できない。

つま先が床へ引っかかる。

足の外側から接地しそうで怖い。

このような患者さんに対して、状態に合った短下肢装具(AFO)を使うことで、歩き方が変わることがあります。

私は装具を、

『できない部分を補い、できる部分を安心して使うための道具』

と考えるとわかりやすいと思います。

たとえば足首が不安定な患者さんに対して、装具で足関節を適切な位置へ誘導する。

すると患者さんは、

「ここへ足をついても大丈夫だ」

と感じやすくなることがあります。

足部のクリアランスが改善すれば、必要以上に脚を外から回さなくて済む可能性もあります。

足関節の位置が変わることによって、膝の動きが変化する場合もあります。

AFOについては、脳卒中患者で歩行速度、移動能力、動的バランスなどを改善する根拠があります。またメタ解析では、装着時に足関節背屈角度がおよそ3.7度増加し、歩行速度がおよそ0.09m/秒改善したという結果も報告されています。[8][9]

ただし、

『装具なら何でもいい』

わけではありません。

足首をどこまで固定するのか。

底屈をどこまで止めるのか。

背屈をどこまで可能であるのか。

膝が反張するのか、逆に膝折れするのか。

痙縮が強いのか。

感覚が悪いのか。

患者さんの歩行によって選ぶ装具は変わります。

そして身体の状態が変化すれば、適切な装具も変わることがあります。

『装具を作って終わり』ではなく、装具を着けた状態で歩行を再評価することが重要です。

※AFOが脳卒中後の歩行能力を改善し得ることは臨床ガイドライン、システマティックレビューで示されています。

※どの形式のAFOが最も適しているかについては患者差が大きく、「この装具が最良」と一律に決められる根拠が十分にあるとは言えません。[8][9]

私は診察で「足が動くか」だけを見ません

では、「足は動くのに歩けない」という患者さんを診るとき、何を見るのでしょうか。

まず脳梗塞の画像を確認します。

どこに梗塞があるのか。

皮質なのか。

内包や放線冠などの白質なのか。

視床など感覚系に関係する場所なのか。

病変の広がりはどうなのか。

そのうえで、実際の身体を診ます。

筋力。

股関節・膝関節・足関節がどこまで自分で動くか。

一つの関節だけを選択して動かせるか。

足首の背屈がどの程度できるか。

内反があるか。

痙縮があるか。

関節そのものが硬くなっていないか。

足底の感覚はわかるか。

足の位置がわかるか。

患側へ体重を乗せられるか。

立ったときのバランスはどうか。

半側空間無視などの高次脳機能障害がないか。

そして、ここからが非常に重要です。

『実際に歩いてもらいます。』

最初にどこが床につくのか。

踵なのか。

つま先なのか。

足の外側なのか。

立脚期に膝はどうなるのか。

反張膝はないか。

患側へ十分に荷重できているか。

遊脚期に膝は曲がるか。

つま先は床から離れているか。

骨盤を必要以上に持ち上げていないか。

脚を外側へ回していないか。

体幹を大きく傾けていないか。

そして必要であれば、装具をつけてもう一度歩いてもらいます。

装具をつける前と後で何が変わるのかを見る。

場合によっては10m歩行、重心動揺計等によるバランス評価などの客観的な指標も使って検査します。

複雑な歩行障害では、AIによる三次元歩行解析などの客観的な歩行分析が役立つ場合もあります。[6]

『歩けない理由を見つけることが、リハビリの出発点です。』

すべての歩き方には「理由」があります

私は、患者さんの歩き方には必ず理由があると思っています。

脚を外側から回して歩いている。

膝を反張させている。

患側へ体重を乗せない。

骨盤を大きく動かしている。

つま先から接地している。

それを見て、

「その歩き方は間違っています」

と言うだけでは意味がありません。

なぜそうしなければ歩けないのか。

足首が上がらないからなのか。

膝が曲がらないからなのか。

感覚が悪いからなのか。

患側へ体重を乗せるのが怖いからなのか。

痙縮が邪魔しているのか。

高次脳機能障害が関係しているのか。

その理由を探す。

そして、

『できないところは必要に応じて装具などで補い、残っている能力をできるだけ使いやすい状態にしたうえで、歩行全体を再び学習していく。』

私はその考え方が非常に重要だと思っています。

※障害と代償を区別し、個別の歩行パターンを評価して治療目標を決めるという考え方は歩行研究・リハビリテーションの考え方と整合します。[6]

※どの代償をどこまで修正することが長期的に最良かについては、患者さんごとの差が大きく、すべての歩容に共通する正解出るというわけではありません。

脳卒中再生医療センターが考える歩行リハビリ

脳卒中再生医療センターでは、脳梗塞・脳出血などの後遺症に対し、骨髄由来間葉系幹細胞を用いた再生医療と、脳卒中後のリハビリテーションに取り組んでいます。[10]

ただし、誤解してはいけません。

『再生医療をすれば、正しい歩き方が自動的に戻ってくる』というものではないからです。

脳梗塞に対する幹細胞治療については、2026年のアンブレラレビューで、神経症状、日常生活動作、運動機能などに改善の可能性が示されていますが、治療法、細胞の種類、投与経路、治療時期などの違いが大きく、有効性についてのエビデンスの確実性は多くの項目で低~中等度です。[11]

つまり脳梗塞に対する細胞治療には有望な臨床研究がありますが、すべての患者さんに一定の効果を保証できる標準治療として確立したとは言えません。[11]

だからこそ、再生医療を考える場合にも、

「足が動くようになったか」

だけでは不十分だと考えています。

その動きを、

立つ。

体重を移す。

一歩出す。

足を適切に接地する。

次の一歩へつなげる。

という実際の歩行へ結びつけていく必要があります。

『脳の状態を見ることと、身体の使い方を見ること。その両方が必要です。』

脳卒中再生医療センターでは、病名だけではなく、

「この患者さんは、なぜ今この歩き方になっているのか」

という視点から一人ひとりの状態を考え、治療とリハビリテーションを組み立てていくことを重視しています。

最後に

脳梗塞のあと、

「足が動くようになった」

ということは、とても重要な変化です。

しかし、それだけで歩行が完成したわけではありません。

『足が動く』から『歩ける』までの間には、もう一つ大きな段階があります。

感覚。

痙縮。

バランス。

患側への荷重。

高次脳機能。

骨盤。

股関節。

膝関節。

足関節。

そして、それらを適切なタイミングでつなぐ脳の働き。

これらが組み合わさって初めて「歩く」という動作になります。

ですから、

「足は動くのに、なぜ歩けないのだろう?」

と思ったとき、

筋力だけを見ないでください。

『なぜ、この歩き方になっているのだろう?』

と考えてみてください。

つま先から着くのには理由がある。

脚を外側から回すのにも理由がある。

膝を反張させるのにも理由がある。

患側へ体重を乗せないのにも理由がある。

すべてのことには理由があります。

その理由を一つずつ探し、

必要なところを補い、

使える機能を生かし、

患者さん自身が安心して身体を使えるようにしていく。

それが脳卒中後の歩行リハビリテーションを考えるうえで、非常に大切なことだと私は考えています。

脳卒中再生医療センターでは、脳梗塞後の「歩けない」を一つの症状としてまとめて考えるのではなく、患者さん一人ひとりについて、その原因を丁寧に評価し、その方にどのような治療やリハビリテーションの選択肢があるのかを一緒に考えていきます。

参考文献・情報源

[1]Winstein CJ, et al.
Guidelines for Adult Stroke Rehabilitation and Recovery. Stroke. 2016.
脳卒中後の歩行訓練、バランス評価、装具療法などの推奨について参照。
原文を読む

[2]Li S, Francisco GE, Zhou P.
Post-stroke Hemiplegic Gait: New Perspective and Insights. Frontiers in Physiology. 2018.
脳卒中後歩行における筋力低下、痙縮、異常シナジー、骨盤・股関節・膝・足関節の連動について参照。
原文を読む

[3]Gait Analysis in Neurorehabilitation: From Research to Clinical Practice.
2023.
脳卒中後歩行の時間的・空間的非対称性、骨盤を含む代償運動について参照。
原文を読む

[4]The impact of proprioception impairment on gait function in stroke survivors: a comprehensive review.
固有感覚障害、足部クリアランス、歩行・バランスへの影響について参照。
原文を読む

[5]Evaluation methods to assess the efficacy of equinovarus foot surgery on the gait of post-stroke hemiplegic patients: A literature review.
脳卒中後の内反尖足における底屈・内反、筋過活動、筋力低下、歩行への影響について参照。
原文を読む

[6]Gait disturbances in patients with stroke.
PM&R. 2014.
脳卒中後歩行を一次的障害と代償運動に分け、患者ごとの歩行パターンを評価する必要性について参照。
PubMedで原文情報を読む

[7]Embrechts E, et al.
The association between visuospatial neglect and balance and mobility post-stroke onset: A systematic review. Annals of Physical and Rehabilitation Medicine. 2021.
半側空間無視と立位バランス、荷重移動、歩行経路との関連について参照。
PubMedで原文情報を読む

[8]Johnston TE, et al.
A Clinical Practice Guideline for the Use of Ankle-Foot Orthoses and Functional Electrical Stimulation Post-Stroke. 2021.
AFOおよびFESの歩行速度、移動能力、動的バランスなどへの効果と、定期的な再評価の必要性について参照。
PubMedで原文情報を読む

[9]The effect of ankle-foot orthosis on ankle kinematics in individuals after stroke: A systematic review and meta-analysis.
AFOによる背屈角度と歩行速度への効果について参照。14試験・282例、背屈角度+3.7度、歩行速度+0.09m/秒。ただしエビデンスの確実性は低いと評価されています。
PubMedで原文情報を読む

[10]脳卒中再生医療センター
「再生医療のリハビリ」「骨髄幹細胞について」
当センターの骨髄由来細胞を用いた再生医療およびリハビリテーションの取り組みについて参照。
公式ページを読む

[11]Kaliyeva V, et al.
Human clinical evidence on stem cell-based therapies for ischemic stroke: An umbrella review with emphasis on mesenchymal stem cells. Journal of International Medical Research. 2026.
26件のシステマティックレビュー・メタ解析を統合。機能改善の可能性は示される一方、有効性の確実性は多くの評価項目で低~中等度であり、標準治療としての一般化にはさらなる研究が必要とされています。
PubMedで原文情報を読む

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